Booklog:『さよなら、愛しい人』
2011年6月28日 14:27 - cityside - streetcorner (books novel)
『さよなら、愛しい人』(早川書房)
著:レイモンド・チャンドラー
訳:村上春樹
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僕にとってのレイモンド・チャンドラーは、誰がなんと言おうと清水俊二の訳文そのもので、しかも本作は世評に反してあまり好みではないのだけれど、それでも新訳が出れば読まないわけにはいかないのは、村上春樹が本書の「訳者あとがき」で書いている通り、「チャンドラーの小説のある人生と、チャンドラーの小説のない人生とでは、確実にいろんなものごとが変わってくるはず」だからで、これは読書についての一般論のように聞こえるかもしれないけれど決してそうではないということは、チャンドラーの小説を読んでみればわかる。「こんなところは一刻も早く立ち去り、できるだけ遠くに離れるべきなのだ。ところが私はドアを開けて、静かに中に入った。それが私という人間なのだ」「ああ、海兵隊の一個中隊を必要としているよ。しかし結局のところ、自分一人でやるか、あるいはまったくやらないか、そのどちらかしかないんだ。行くよ」。死体を探している場面で「片膝をつくと、布地を通して地面の湿気と冷たさが伝わってきた」なんてことは彼にしか書けないし、とりわけ本作では海の描写が素晴しい。矢作俊彦は、冒頭の写真を廻るプロットを二村永爾シリーズではなく『あ・じゃ・ぱん』に、オマージュとして用いている。
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H.


