矢口南児童公園 open!
2009年4月10日 09:37 - creationside (art, design)
エイプリルフールズデー、新しい年度の初日に「多摩川アートラインプロジェクト」がデザイン監修した「大田区立矢口南児童公園」(東急多摩川線武蔵新田駅近く、525平米)がリニューアルオープンし、僕もテープカットに参加させてもらいました。民間がスモールパーク(ポケットパーク)のデザインをすること自体、極めて異例のことなのですが、拍子抜けするほどに改修工事が順調に進んだのは、自治会・町会・商店街をはじめとする自治意識の高い地元の方々、「いい公園にしよう」と思って下さった大田区の現場職員の方々のお陰と感謝しています。
この公園はなんとかならないものだろうか。最初にそう考えたのは、2年前、地元の方々の要請で新田神社に現代彫刻(写真上段:『LOVE神社』と『石の卓球台』)を置かせて頂いたときのことでした。目の前の公園が開かれたものになれば、神社、商店街と合わせた一体のパブリックスペースになるはずだと思いました。地元出身のスタッフから「子どもの頃から、あの公園には行っちゃいけないと言われていた」と聞かされたことも、その思いに拍車をかけました。所轄の自治体である大田区に問い合わせたところ、ちょうど改修工事の予定があり、地域をあげての取り組みである「多摩川アートライン」でということならばデザインの提案を受けてもいいがデザイン料は払えない、と言われました。あとに述べる入札制度があるからです。ともかくも、二つ返事で引き受けましたが、お陰でランドスケープを担当したデザイナーの諌元大輔くんと、彫刻を担当したアーティストの渡辺元佳くんには、過剰なただ働きをさせてしまうことになりました。地元の産業技術を使うという趣旨で難度の高い彫刻製作をお頼みした鋳造工場も、大変だったのではないかと思います。
設計についての課題は多岐に渡りましたが、改修前と改修後の写真(写真下段)を見比べて頂ければ、どのようなことを心掛けたかは、大きな部分についてはお分かり頂けるのではないでしょうか。僕が、このプロジェクトの完結を確信出来たのは、近隣説明会に出たときのことでした。近隣説明会というのは、工事関係者が着工前に近隣の方々に対し工事の概要について説明する会のことで、法律で義務付けられています。今回の場合は、公園の前の新田神社の境内にある町会室で30人ほどが集まって行われました。近隣説明会といえば工事関係者が袋叩き(言葉は悪いですが)にされるのが通例ですから、さすがの僕も緊張感を持って挑みました。しかも、区役所の担当者が、詳しい説明は僕からして欲しいと言うので、無理からぬことです。ところが、蓋を開けてみれば、とても充実したタウンミーティングになりました。「地域で公園を運営管理するような仕組みが出来ないだろうか」といった一歩も二歩も進んだ議論にまで発展したのです。古くからの地元の方々も、新興住民の方々も、障害者団体の方々も、特定の政党の方々も、公園愛好家も、出来るだけの情報をお伝えし、全体の優先順位と筋道を整理して示す努力を怠らなければ合意形成は可能なのだ、ということを学びました。もちろん、このような説明は誰にでも出来るわけではないということについては多少の自負も持っていますが、それはそう難しいことではありません。そして、会の終わりの自治会長の吉田英一さん(元鳶職の77歳)の胸を打つ呼び掛けを、僕は忘れることが出来ません。「いろいろとあるだろうけど、いいところを見ようじゃないですか。ここまでよくしてくれたんだから、あとはそれを活かすも殺すも、地元の我々の問題なんですよ。いい地域にしていこうじゃないですか」。
矢口南児童公園に限らず、都内には、猫と鳩と酔っ払いしか入れそうもないスモールパーク、タクシードライバーのトイレにしか使われていないようなスモールパークが沢山あります。なぜ、そうなってしまったのか。概ね、以下のような理由ではないかと思います。ー 1)集票組織でもあった旧街区ごとにスモールパークを配置した政策と、それに対応していた自治組織の弱体化。2)入札への参加資格の条件と、入札に適用される項目。現状では、専門分野は造園に限られ、質的精査の入り込む余地もないに等しい。3)批判やクレームの対象になりやすいことと、それに対する自治体の説明力不足。結果、標準設計を守ることのみに執心し、著しくアクションの生まれ難い状態になっている。4)維持管理、及び運営業者の固定化。指定管理者制度により一部門戸は開放されたものの、費用の圧縮のみがクローズアップされ、質的精査や運営面での適切な評価がなされているとは言い難い。ー スモールパークが変われば、東京の景観やコミュニティーの在り方は変わります。上記のような原因のすべてを一挙にクリアすることは不可能でしょう。しかし、自治体と市民という対立構造に陥り勝ちな日本のパブリックスペースを巡る問題において、中立な立場の中間団体(NPO等の公益的非営利団体)が間に入ることの意味は大きいように思います。「多摩川アートラインプロジェクト」では、今後はスモールパークへのコンペ制度の導入を提言していきたいと考えていますが、矢口南児童公園にとって大きな事故がなく市民に愛されるスモールパークとなることは当然に期待されることとして、同時に、こうした問題意識への先駆的な事例としての役割りを担っていくことを、僕は期待しています。次は、本家ニューヨークの「ヴェスト・ポケット・パーク構想」(ロバート・ザイオン、1963年)の先陣を切ったペイリーパークのように、大人のための公園をつくってみたいですね。
H.








