I Wanna be with You 2009 !!
2009年1月26日 09:30 - cityside (life)
街中が心身を強張らせていた2008年の年末、年内最後のミーティングが終えると同時に風邪を引き、その風邪が治ったところで、正月休みが終わった。新しい年になり、僕はベッドの中で口笛の練習をした。年が変わったぐらいでは音は鳴らなかった。他に1つだけしたことがある。大掃除だ。精神をクリアにする作業。大掃除を終えたとき、ぼんやりとではあるけれど新しい年に対するイメージが湧いてきた。そして、翌日、オフィスのドアを開ける頃には、新しい年の中にいた。朝だというのに斜向いのスナックから聞こえてくる調子っぱずれの歌声、フリーズするぐらいに大量の電子メール(その半分が何かの案内だ)、グリーティングカードの束、相変わらずごった返したままの机、のんびりしているけれど人間的なスタッフ、、、。
昨年について、少し近況報告をしよう。遠くの友人に僕が元気でやっていることを伝えるには、ウェブサイトは便利な道具だからね。僕次第では、20年前までは改札口の横にあった伝言板ぐらいには、伝えられるかもしれない。例えば、「君を待っている。」というようなことぐらいは。
肉親の病気、初めてのストーカー被害、周囲でいくつかの訴訟。親友の1人が結婚し、何人かのガールフレンドがママに、何人かのボーイフレンドがパパになった。グッドデザイン賞受賞、2年目を迎えた多摩川アートラインプロジェクト(さまざまな挑戦を楽しんだ)、3つの大学をはじめとする数件の講演。自社物件の着工(新しい挑戦の1つとしたい)、ブランディングプロジェクトのリリース、引き続き請け負い施工中の新築プロジェクトが8件。リーマンショックと12月危機、そして、当然のことながらここに書くことの出来ないさまざまな出来事。あまりこういう書き方は好みではないのだけれど、伝言板に書ける分量に掻い摘むとしたら、出来事の連鎖としての2008年はこんな具合だった。
そして、年末に友人たちと確かめ合った。「世界はマーケットよりも芳醇だ」。当然のことだ。世界は芳醇で、社会はその芳醇さをどこまで汲み取ることが出来るだろうか。僕は、どちらの住人でもあるのだ。
一方、出来事の連鎖以外の2008年を伝言板に書ける分量に掻い摘むならば、次のような具合だろう。この5年間、僕は、異なる2つの概念をどうやったら併せ持ち、維持出来るかということを考えてきた。僕だけでなく、数十年前にスコット・フィッツジェラルドが、十数年間にスーザン・ソンタグが同様の課題で思い悩んでいたらしいが、あるいは、誰もがそうなのかもしれない。例えば、社会化すべきものと社会化されてはならないもの、現実的な方法と抽象的な思考、強固さとナイーヴさ、企業人、活動家としての自分と創作家としての自分。僕は、川の流れの中で一方に砂の塔を守り、もう一方で別の砂の塔をつくっているように感じたものだ。僕は力んでいた。そして、ある日、もう力んでいないことに気づいた。自転車でバランスをとることが、クロールで息継ぎをすることが、ドラムセットの手と脚をバラバラに動かすことが気にならなくなるように。それが、2008年だった。もう大丈夫だ、僕はそう思った。葛藤が消えることはなく、消えるべきでもないが、どちらか一方が僕からなくなることを心配をする必要はもうないだろう。
オーケー、夜を待って再び港を出よう。
さまざまな事情を抱えて、2009年の僕はスタートした。新しい年、僕は目立った挑戦を掲げることが出来ないかもしれない。しかし、ここ数年間にやってきたことが、少しは実を結ぶだろう(甘っちょろい考えかな)。そして、出来ることならば、次の航海の準備をしたい。
2009年1月20日現在、街はまだ心身を強張らせている。僕の警戒心も解けない。悪ふざけに過ぎたパーティーが終わったことには拍手を贈りたいけれど、予想以上にムードの悪い「おひらき」になってしまったから。この街は、これからも同じことを繰り返すかもしれない(というのも、人類は愚かで、そうじゃなくても、変わらなければならない理由は大部分の個人においては希薄だから)。でも、少しの間、人々は欲望と夢を履き違えることに慎重になるだろう。派手なメッセージが響く時代ではないかもしれないが、卑屈な精神を御免被りたいならば、その間にやれることは少なくはないはずだ。もっと人間的(ヒューマンタッチでヒューマンスケール)なコミュニケーションがリアリティを持つのではないか、と僕は思い始めてる。例えば、「真心」とか「正直さ」といったものが。そして、いつかそう遠くないうちに、と僕は思う。その先に、人々がそれぞれの枠を越えたもっと大きな社会イメージを持ち、長期的な取組みに向かう日が来るかもしれない。
午前1時、南青山の自室でラップトップに向かっている。冬の夜気を縫ってヘリコプターの音が聞こえてくるが、あるいは気の所為かもしれない。僕は、現在から1年間の僕、それから現在から1年間の君を思い浮かべる。それは実際の君や僕ではないけれど、他の誰かでもない。とても不思議な気分だ。
I Wanna be with You 2009 !!
新しい年、君に心の平穏と素敵な冒険が訪れることを願っています。
ー 田中裕人 ー



