「梅屋敷ハウス」竣工 オープン・ハウス
2008年3月 3日 09:58 - creationside (architecture)
室伏次郎さんの設計で、我々のグループの施工部門が施工を担当した『梅屋敷ハウス』が竣工し、設計事務所の主催でオープンハウスを開催した。京急梅屋敷駅とお世辞にもアクセスがよいとは言えない土地に建てられた施主の住宅と賃貸住宅5戸の地上3階建てのこの長屋を訪れる人の流れは、土曜日の午前10時から午後5時まで途切れることはなかった。来場者は160人を超したという。こうした幸福な竣工祝いが出来たのは、室伏次郎という特異な建築家の長年に渡る建築と人に対する姿勢の他によるものではない。


室伏さんは、純建築的な建築家だ。代名詞とも言える補修も磨きも拒んだ荒々しい打放しのコンクリートの壁、その壁で踊る光、ヴォリュームに対する想像力が隅々まで感じ取れる適切な細部のサイズ感、それらが有機的に絡み合った間取り。その他には何もないから、建築写真を見る限りではとても口べたな印象を受ける。しかし、一歩空間に足を踏み入れるとこれほど雄弁な建築にはそうそうお目に掛かれない。室伏次郎さん自身も、そんな人だ。
「普通は汚されるのが怖くてオープンハウスなんかできないでしょ。僕のは大丈夫なの。」と言って、室伏さんは笑った。そう、彼の空間では、少々の壁の汚れや散らかった洗濯物や今一つの家具や雑貨は、それほど気にならないのだ。それは、荒々しい打放しの壁だけが原因というわけじゃない。
設計事務所が主催のオープンハウスといったら、クライアント候補のディベロッパーを呼ぶのが通例であり、それ以外にはない。しかし、彼はそれをしない。今回の来場者の殆どは、学生と同業の建築家諸氏だった。ベテラン建築家と話していても、かつての研究室の教え子の顔を見付けてはすっと抜け出してにこやかに話しに行く姿には、大家の貫禄さえ感じられた。頑にその姿勢を貫いて来た建築家の後進へのやさしさは、「頑にやれ」という無言のメッセージでもあるのだ。もちろん、それは僕に対してのものでもある。
「『実は構想の最初は図面を引かない。言葉だけたくさんメモ帳に書きつけておくんだな。で、ぎりぎりまで何もしない。その間に頭の中でどんどん醗酵しているわけ。そのままでもいいんだけど、建てなくちゃいけないからね(笑)。締切り間際で図面にする。そのときにはすべての細部はできている。』やや秘密めいたプロセスを聞いて、それではまさにイタコではないかと冗談に述べると、真顔で『そうかもしれない』という。」(『新建築・住宅特集2007年8月号』より)
H.








