今年最初のポートレートカード
2008年1月15日 09:47 - creationside (photograph)
タクシーのラジオがこの冬一番の冷え込みだと伝えていた。
トレンチの襟を立て、雨に濡れてかじかんだ手で部屋の郵便受けを開けると、
何枚かの年賀状に混じって、目の覚めるようなブルーが目に入った。
海と空にしかないブルーだ。
裏返すと見慣れた汚い字でこんな文句が書いてあった。
「沖縄は初夏だ。冷えきったシャンパンが美味い! I.」
こっちは、あと30分は暖まらない部屋で膝を抱えて震えているというのに、嫌味な年賀状だ。
ついつい、冷やし過ぎのシャンパンは無粋だ、などと毒づきたくなる。
更に嫌味なことに「THE Atta Terrace CLUB TOWERS」のロゴがあったのだが、
プールに映り込んだ空の青とパラソルの白、緩やかな貿易風になびく棕櫚の葉影、
水平線と平行に伸びる雲の帯、これらはどう考えても1日、2日の撮影で撮れる代物ではなく、
ホテルのアメニティにしては妙によく出来た写真だと思って視線をずらすと、
薄いゴールドの印字が、遠慮気味に三好和義の撮影であることを示していた。
ホテルのアメニティも、ここまで来てしまったのだ。
そんなわけで、この他に、クリスマスカードと年賀状の束の中から
ポートレートカードをあと2枚取り出して撮影したのが、この写真だ。
1枚は、愛用しているイギリスの
スーツケースメーカー「GLOBE-TROTTER」からのクリスマスカードで、
大きめの厚紙いっぱいに古いモノクロームのロンドンの写真が引き伸され、
その中を実に自然に、
目に見えない存在としてのサンタクロースがグラフィックで描かれている。
目に見えない普遍的な存在としてのサンタクロースを媒介として、
数十年前のクリスマス休暇を迎えたロンドンの雑踏と
今クリスマスを迎えようとしている東京が、リアリティを持って繋がる。
そんな老舗ならではのユーモアとロマンティシズム、
その為に抑制されたデザインを僕は毎年楽しみにしている。
2006年の写真は「1926年のパディントン・ステーション」で、
2007年の写真は「1965年のボンド・ストリート」だった。
もう1枚は、結婚を知らせる友人からの年賀状で、
写真は7月に僕が撮影したもの、
いや、気負わずに言うならば「PENTAX 645N」が写したものだ。
デザインをディレクションする時間が割けなかったので、
教会や披露宴でなく、オフ・ショットから数枚を推薦しておいたのだが、
その通りにしてくれた。
僕も、数年前までは都心の失われてゆく建築物とセルフポートレートをテーマにした
ポートレートカードを年賀状にしており、
今年も、古い友人たちの何人かからは、そのシリーズに戻して欲しいとのリクエストを貰った。
ポートレートカードには、
意識するしないによらず、その時代が映り込むものなのだ。
H.



