4冊+αの『The Long Goodbye』
2007年7月 9日 10:39 - creationside (novel)
遅ればせながら、
レイモンド・チャンドラー『The Long Goodbye』の
村上春樹に手よる新訳、『ロング・グッドバイ』を読んだ。
氏が、訳者あとがきに書いている通り、
既訳である清水俊二の『長いお別れ』に比べ、
細部のヴォリュームが増し、構成上は格段に原文に忠実になっている。
僕の英語の読解力でも、わかるぐらいに。
そこで、はっきりしたのだが、
僕にとってのレイモンド・チャンドラーであり、フィリップ・マーロウ(主人公であり語り手)は、
やはり、清水俊二なのだ。
(ちなみに、チャンドラーの日本語版には、僕の知る限り少なくとも6人の訳者がいる。)
新訳の『ロング・グッドバイ』に流れている空気は、
内省的でどこか現実感がなく、幾度となく僕に『風の歌を聴け』を思い起こさせた。
慎重さ、丁寧さ故に、「異質な言語に対する違和感」のようなものが不足している。
どちらにしても、皆さんには、
『The Long Goodbye』『長いお別れ』『ロング・グッドバイ』を、
それぞれ、読んで頂けると嬉しい。
3篇何れの『The Long Goodbye』においても、
我々の代わりに、失われたものを見付け出そうと都市を彷徨するフィリップ・マーロウに、
お目に掛かれる筈だ。
そして、もう1つ。
レイモンド・チャンドラーの文体について述べるのは、別の機会に譲るとしても、
『The Long Goodbye』に基本構造を借りた作品例が、
ポール・オースターの「ニューヨーク三部作」の締め括りである『鍵のかかった部屋』や、
村上春樹の「僕」の系譜の3作目にあたる『羊をめぐる冒険』といった偉大な小説に代表されるように、
数限りなくあることを忘れてしまっては、つまらない。
個人的には、舞台をロス・アンジェルスとアイドル・ヴァレーから横浜と横須賀に、
小道具のカクテルをギムレットからダイキリに持ち替えて、
全く同じプロットで挑んだ矢作俊彦によるオマージュ
『THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ』をお薦めしたい。
二村永爾シリーズの20年ぶりの最近作となった、驚くばかりの秀作だ。
話は変わるが、
『ロング・グッドバイ』にしても『THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ』にしても、
近年の装丁の水準の高さには、目を見張るものがある。
H.






