内田繁さん、受章のお祝い
2007年7月 6日 09:30 - creationside (design)
内田繁さんの紫綬褒章受章を祝う会が、
浅葉克己さん、伊東豊雄さん、三枝成彰さん、日比野克彦さん、
松岡正剛さん、三宅一生さん、山口昌男さんを発起人として、
昨夜、泉ガーデンギャラリーで行われた。
インテリアデザイナーである内田繁さんとは、
その昔、実家の改装をお頼みした時からのご縁で、
内田さんのオフィス兼自宅兼ギャラリー「ル・ベイン」の施工をさせて頂いてからは、
分譲マンション事業でご一緒させて頂くなど、公私に渡り懇意にして頂いている。
開会の挨拶は、松岡正剛さんで、
奥様でデザイナーの三橋いく代さんへの受章でもあるということを言われた。
続いて、内田さんはご自身のご挨拶の中で、「質素の美」という旨をおっしゃった。
茶の湯についての故田中一光さんの文章を思い出した。
『茶とは本来、質素が豪華に引けめを感じることなく、貧しさのなかに秘めた知性なり感性なりが誇りとなりうる世界なのである。そうした精神文化を世界に発信し、別の価値体系を確立できれば、それほど多くの資源を使うことなく、自ら美意識を誇ることができる。そのためにも、茶の湯の精神を世界語として発信する必要があるのではないか。』(田中一光『デザインと行く』)
会場では、多くの著名な文化人をお見掛けしたが、
女優の山口智子さんを始め、ソウルでの「内田繁デザイン展」以来でお目に掛かる方々が多く、
楽しいパーティーだった。
内田さんは、デザインを知らない人々にやさしい。
とりわけ、途上国への文化振興にはご熱心で、
昨年は、南アフリカにご講演にいらしていたが、
出発前に、こんなことをおっしゃっていた。
「20年前に南アフリカ政府からプロジェクトを頼まれたことがあってね。その時は、まだアパルトヘイトがあって、考えた末、『貴国のことは尊敬しているが、あの制度だけはどうしても私の信条に反するもので、残念ながらお受けすることは出来ない。』という手紙を書いたんだ。そういうことがあったから、政策がなくなった今、また依頼が来たことは感慨深くてね。どうしても行かなくちゃならないと思ったんだ。」
(このケープタウンでの講演の内容は、近著『普通のデザイン』に編集、収録されている。)
はにかんだ笑顔の中に時に鋭く真剣になる内田さんの教育的な眼差しと、柔らかい握手には、
曾て途上国であった日本で、デザインを創成期から担って来られたからこその真実と暖かさがあり、
僕は、いつも何も言えなくなる。
写真(左)は、浅葉克己さんの手によるインヴィテーション・セットのうち、半紙を用いた1点。
桑沢デザイン研究所での内田さんの先輩に当たる浅葉さんには、
まったくの偶然だが、現在、
多摩川アートラインプロジェクトのロゴマークと一連のノベルティ・グッズのデザインを、
我が侭を言って、お引き受け頂いている。
『「弱さ」とは単に弱いことだけを指すのではありません。「弱さ」という感覚世界がつくりだす感情と深く関わることです。例えば、「自然の移り変わりがつくり出す驚きに満ちた世界」「すれ違いざまに嗅ぐ香りが懐かしい記憶の断片を甦らせるような切なさ」「なつかしい音楽が眠っていた感情を掘り起こすような時間」「トワイライトといった時間がもたらす昼と夜との境界」。こうしたものや状況がつくり出す情感はけっして傲慢な心、攻撃的で凶暴な心から生まれるのではなく、そこにはやさしさと憂い、寂しさと侘びしさ、はかなさと移ろいやすさなど、慈しむ心が潜在しています。デザインとは、そうした人の心に向かっておこなうものだと思います。』(内田繁)
H.





