自由への査証
2007年6月19日 08:55 - cityside - creationside (life)
学部時代の専攻は何だったのか、という質問を受けた。
僕は、性向や興味にジャストフィットするということであれば、哲学か現代美術論だったのだけれど、
種々の事情があって、西洋思想史を選んだ。
研究者になる道がないことが分かっていたということや、
自分にとって本質的でないこと、つまり社会原理について学ぶことの方が、
より自分の可能性を拡大することに繋がると思ったことなどによる。
卒業論文のタイトルは、
『絵画とその周辺に見る14世紀フィレンツェにおける精神生活のコラージュ』。
宗教的世界から表現の時代への過渡期において、
人間の想像力の僅かな表出の断片を見て取ることが、そのテーマだった。
もちろん、それは、不出来な学生であった僕の力の及ぶところではなかったのだけれど、
それ以来、というより、その以前から、
如何なる状況下においても何人たりとも人間の想像力を奪うことは出来ない、
というのは、僕の信条の譲れない中心となっており、今後、それが変わることはないだろう。
そして、そのイメージは、常にある一曲のポピュラーソングとオーバーラップし続けている。
現代音楽の巨人、武満徹が作詞作曲した『翼』は、
一見して子守唄のようでありながら、
並々ならぬ熱情が蒸溜精製された、たおやかな宇宙観、
「自由」という言葉の持つ不自由な反逆性を軽く越えてみせる
自然体の想像力の無限の広がりを提示している。
風よ 雲よ 陽光よ
夢をはこぶ翼
遥かなる空に描く
「希望」という字を
ひとは夢み 旅して
いつか空を飛ぶ
風よ 雲よ 陽光よ
夢をはこぶ翼
遥かなる空に描く
「自由」という字を (作詞作曲:武満徹、歌:石川セリ)
『きっと多くの方が、なぜクラシックの、しかもこむずかしい現代音楽を書いている作曲家がこんなアルバムをつくったりするのか、不思議に思われただろう。『翼』といううたにも書いたように、私にとってこうした営為は、「自由」への査証を得るためのもので、精神を固く閉ざされたものにせず、いつも柔軟で開かれたものにしておきたいという希いに他ならない。』(『SERI TORU TAKEMITSU POP SONGS』後記より)
H.



